「ジビエ」と聞いて、皆さんはどの動物を思い浮かべますか?多くの人が鹿(シカ)や猪(イノシシ)をイメージするでしょう。しかし、私たち食肉加工のプロや、食通のあいだで密かに「最も美味しいジビエ」と囁かれている動物がいます。
それが、今回ご紹介する「穴熊(アナグマ)」です。別名「マミ」とも呼ばれます。
昔からよくタヌキと混同されがちで、ことわざの「同じ穴の狢(ムジナ)」の由来にもなっています。これは、アナグマが掘った巣穴をタヌキが利用することから生まれた言葉ですが、実は生物学的にも、そして何より「味」においても全くの別物。アライグマとも違います。
「同じ穴」にいたとしても、その脂の質は別格。一度食べたら忘れられない、その驚くべき美味しさの秘密を解説します。
見た目のインパクトを裏切る、上品な「脂の甘み」

穴熊最大の特徴、それは何と言っても「脂身」です。冬眠前に栄養を蓄えた穴熊(アナグマ)の肉は、個体によっては赤身よりも脂身の方が多いほど。一見すると「脂っこくて食べられないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、ここが穴熊(アナグマ)のすごいところ。穴熊(アナグマ)の脂は、猪や豚の脂とは全く性質が異なります。融点(溶ける温度)が非常に低く、口に入れた瞬間にサラリと溶け出すのです。ベタつきや胃もたれ感はなく、まるで高級なバターのような芳醇な甘みが口いっぱいに広がります。この「飲めるような脂」こそが、美食家たちを虜にする理由です。
似てるけど別物?穴熊(アナグマ)とアライグマとの違い
よく混同されがちですが、日本の里山に住む「ニホンアナグマ(イタチ科)」と、外来種の「アライグマ(アライグマ科)」は全く別の生き物です。
私たちが主力として扱っているのは、古来より日本の里山で「マミ」と呼ばれ、汁物(マミ汁)などで親しまれてきたニホンアナグマです。イタチ科特有の旨味があり、適切な処理を施せば臭みもありません。かつては昔話に出てくる「タヌキ汁」の正体は、実は美味なアナグマだったという説もあるほど、昔から日本人に愛されてきた味なのです。
なぜ市場にあまり出回らないのか
これほど美味しい穴熊(アナグマ)ですが、スーパーで見かけることはまずありません。その理由は「捕獲の難しさ」と「個体差」にあります。鹿や猪に比べて個体数が少なく、捕獲できる数に限りがあります。まさに「幻のジビエ」。
当店では、地元の猟師さんと連携し、質の良い穴熊(アナグマ)が入った時だけ皆様にご提供しています。「ジビエの王様」とも称されるこの味、ぜひ一度体験してみてください。
脂の甘み、とろける食感、そして希少性。穴熊(アナグマ)は、ジビエ初心者の方にこそ食べていただきたい「感動体験」のあるお肉です。

